小松庵 「とことん、」
ごあいさつ
KOMA通信
●シリーズ1/厳選素材
 vol.1/新得町産の玄そば
 vol.2/開田村と山都町産の玄そば
 vol.3/新得町産の「そばミツ」
 vol.4/そば焼酎「サホロ」
 vol.5/みりん(九重櫻)
 vol.6/新しいつゆ。新しい玄そば

 vol.7/豆腐とカマボコ
 vol.8/天ぷら油
 vol.9/穴子と車えび

●シリーズ2/そば学雑記帳
 vol.1/そばは信州?
 vol.2/そばの品種って?

●シリーズ3/職人の内緒話
 vol.1/「そば祭り」で出張そば打ち
 vol.2/平成7年産の玄そばは凄かった
 vol.3/玄そばの保管方法を変える!?

●シリーズ4/そば屋で昼酒
 vol.1/そば焼酎のそば湯割り

 vol.2/鴨焼き
 vol.3/ひめ穴子の天ぷら

●シリーズ5/お店からの便り
 vol.1/忘れられないお客さま
 vol.2/店舗デザイナーのこだわり
 vol.3/接客は十人十色
店舗紹介
とことん、の風景
<小松庵お薦め蕎麦本>
そば打ちの本3
発行:株式会社双葉社
バックナンバー:そば打ちの本
そば打ちの本2
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 そば湯倶楽部
  -厳選素材から職人の内緒話まで
Vol.5/三河仕込みの本みりん『九重櫻』
『九重櫻』は、小松庵のそばつゆに命を吹き込みます 九重櫻 そばつゆに、深みとやさしさをもたらすのが味醂(みりん)です。いま、小松庵で使っております味醂は『九重櫻』。これは、私どもにとって、いわば、「とことん、」の師のような存在である九重味醂株式会社さんが醸造されている本味醂です。

『九重櫻』は、スーパーなどのいわゆる「量販店」ではお買い求めできません。本物をつくり続ける姿勢からしか出しえない味。それがわかる、プロの料理人たちが直接取り寄せている品です。

 この『九重櫻』は、小松庵のそばつゆには絶対に欠かせないものとなりました。原料に焼酎だけではなく、その何倍も高い粕取り焼酎を混ぜて原料にしているため、その甘い香りの中に、独特の臭いがあります。この味醂と出合った当初は、そのクセのある臭いゆえに「そばつゆには向かないか」と心配したのですが、まったく正反対でした。つゆづくりに目を光らせている二代目は、「俺はこの臭いは嫌いだ。でも、つゆづくりに使うと実にいい甘みとうまみが出る。味醂はこれでなければダメだ」とはっきり言います。
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ひよくもち 『九重櫻』の原料となるもち米は、佐賀県産の「ひよくもち」という品種です。羽二重持ちのようなやわらかいもち米ではなく、少し固めでつぶが大きめ。この品種を使っているのは、2ヶ月の間、もろみ状態でゆっくりと甘みを出していくので、つぶれにくいしっかりとした米でなければいけないからです(つぶれると雑味がでる)。

 原料のもち米は、玄米のまま定温倉庫に保管してもらったものを、仕込みの時期に使う分だけ精米して使っていらっしゃいます。これは、小松庵が玄そばの保管用定温倉庫をつくった理由と同じです。もち米を蒸す工程も、圧力をかけて蒸す他社のやり方ではなく、自然の蒸気を使い、解放状態で蒸していらっしゃいます。

九重櫻 もち米と米麹と焼酎を混ぜ合わせたもろみは、伝統的な櫂入れ作業によって、均一に熟成されます。原料に米焼酎だけではなく、その何倍も高い粕取り焼酎をブレンドして仕込んでいることはすでに述べましたが、どのくらいの比率でブレンドするのかについては、どうやら門外不出のようです。
雑味を出さないための原料選びに、小松庵のそばづくりの正しさをみました
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味醂とは、甘み成分が絡み合った、日本の醗酵文化の真髄です 九重櫻 もろみを絞って味醂と味醂粕にわける工程も、佐瀬式圧搾機という昔のままの道具を使うなど、手間隙を惜しまない姿勢を貫いていらっしゃいます。もろみを袋に入れ、その上から重しを乗せ、その自然な重みだけでゆっくり絞っていくやり方です。これは、自動圧搾機のように無理な力を上からかけるわけではないので、もち米がつぶれず、雑味の少ない、いいとこどりの味醂ができあがります。

 そのまま飲んでみると、『九重味醂』と他の大手メーカー品との味のちがいがはっきりとわかります。まったく別次元の味わいです。厳選したうるち米を使って杜氏がつくる元気な麹をピカピカに蒸しあがったもち米にまぶし、本格米焼酎と粕取り焼酎を混ぜ、2ヶ月をかけて醸造するからこそ、ビロードのようなめらかさや、複雑な旨味が育まれるのです。
本味醂の甘み成分は、ブドウ糖を中心に、オリゴ糖など9種類以上。それに対して砂糖の甘み成分は「ショ糖」のみ。これが味醂のコクや深みを生み出します。また、砂糖の甘み成分である「ショ糖」の分子と比べると、味醂の甘みの主成分であるブドウ糖の分子は小さく、これが、味醂のまるみを生み出します。

九重櫻 もともと、味醂は飲みものでした。いまでは、正月の年取りのときに飲むお屠蘇(とそ)として使われているのが、その名残です。味醂をつくる際に仕込むもろみを、そのままつぶしたのがお雛様のときに飲むあの白酒。白酒が甘いのは、味醂が甘い理由と同じ。味醂は、3百年近く続く日本の醗酵文化を象徴するものなのです。
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九重櫻 スーパーで良く見かける「みりん風調味料」は、ブドウ糖や水あめにグルタミン酸や香料を混合したもので、味醂とは似て非なるものです。味醂はアルコール度数が10数度の「酒類」なので、少し前まで、酒類を扱えないスーパーでは販売することができませんでした。そこで考え出されたのが、「みりん風」という言葉で飾ったまったく別種の調味料。つまり、みりん風調味料は、売上を伸ばすという目的だけでつくられたイミテーションなのです。

 では、「本味醂」と謳っている商品だったら、昔のつくり方をそのまま守った本物なのかというと、実はそうでもありません。味醂は本来、蒸したもち米に米麹と焼酎を混ぜ(仕込み)、出来上がったもろみを、数ヶ月間寝かせたあと(糖化熟成)、圧搾機でゆっくりと搾り、さらに熟成(貯蔵熟成)させて完成させます。しかし、酒類法の改定によってスーパーに並ぶようになった「本味醂」の多くは、国内産のもち米ではなく、質の悪い輸入物を使ったり、本物の焼酎のかわりに醸造用アルコールを大量に混ぜたり、生きた麹を使う手間と暇を省くために酵素を多用してつくっている、効率最優先の「本味醂」です。

九重櫻 九重味醂さんは、戦後、大量生産大量消費の時代がやってきても、昔ながらのつくり方を守り通されます。だからといって、「こだわり」を宣伝材料に使うことはなく、私たちプロの料理人にも、「使ってみて判断してください」という姿勢を貫かれてきました。

 「ものづくりは人」「人の思いがものづくりを左右する」。この考えも、小松庵と同じです。しかし、私たちの場合、こうした姿勢になってからまだ日も浅く、ひよっ子、同然。今後も、『九重櫻』という味醂を通して、ものづくりのイロハを学んでいきたいと思っています。
こだわりを宣伝材料にしない。当たり前のことを当たり前に、という姿勢
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